
ドロ縄では損をする相続税
相続が発生した際、相続財産の全てが相続税を計算するときに評価した金額で換金できるわけではありません。
例えば、相続財産が不動産と少しの預金であった場合、相続が発生したのち、急いで不動産を売却しようとすると安くなってしまったり、先祖代々受け継いだような土地だったりすると、大きな売却益が出てしまい、所得税もかかります。
この場合、支払う相続税の一部を取得費に加算してくれる特例もありますが、譲渡益が出てるのでゼロになりません。(それでも軽減はできます)
何れにしても、手取りが大きく減ることになってしまいます。
ですので、生前、ざっくりとでも良いので相続税の計算を一度行っておくと事前に対策が打てるため、手取り部分の減少を最大限抑えることができるのです。
相続税の計算方法
基礎控除は、
基礎控除=3000万円+相続人の数×600万円
で計算されます。
この基礎控除を超える部分に対し、税率がかかってきます。
<例>
被相続人(亡くなられた人):父親
相続人:長男 長女
相続遺産:自宅1億円 アパート6000万円 預金3000万円 借金4000万円
<Step 1>
財産の総額=1億円+6000万円+3000万円ー4000万円=1億5000万円
<Step 2>
基礎控除を計算します。
基礎控除=3000万円+相続人の数×600万円なので
3000万円+2×600万円=4200万円
超える部分=1億5000万円ー4200万円=1億800万円
一人分=5400万円

<Step 3>
長男と長女のそれぞれの相続税は、
5400万円×30%(税率)−700万円(控除)=920万円
合計=1840万円
<Step4>
長男:自宅、アパート、借金
長女:預金
とすると、
長男:1億円+6000万円ー4000万円=1億2000万円
長女:3000万円
長男:長女=4:1なので
按分すると
長男:1840万円×4/5=1472万円
長女:1840万円×1/5=368万円
相続税の支払い期限は
まず、相続が発生した日の翌日から4ヶ月以内に、その年の1月1日からの不動産所得や年金についての確定申告を行い、所得税を支払います。
この所得税は、借金と見なされ、相続財産から引くことができます。
相続税自体は、発生した日の翌日から10ヶ月以内に申告書を提出して、その際に税金も支払います。
遅れると延滞金や加算金がありますので、遅れないようにしましょう。
先ほども申し上げた通り、相続発生後に慌てて
①相続財産の一覧表を作る
②遺産分割協議
③相続税の計算
をしていると、財産が不動産だった場合、売り急がなくてはならなくなり、結果、安売りすることになってしまいます。
かといって、生前に計算することも慮られる部分もあるかと思います。
なので、あくまでも大まかで結構ですので、把握はしておくぐらいが良いかと思います。
アパートを建てる節税効果とは
相続税を計算するときに、相続財産を計算します。
預金の場合は、通帳の残高そのままです。
ただ、不動産の場合は、実際に売却しないと時価がわかりません。
そこで、不動産については、
建物=固定資産税評価額
土地=相続税路線価
で評価すると決まってます。
固定資産税評価額=建築の30〜50%
相続税路線価=土地の時価の80%
なので、例えば1億円の預金があった場合、不動産に変えて相続した方が評価額が下がり、節税効果がある、というわけです。
さらに、アパートを相続した場合は、自分で自由に使う事ができない分、さらに評価が下がるのです(賃貸割合による)。
それが木造の場合は、さらに30%減額できるので、
例えば1億円のアパートの場合、
1億円×40%×70%=2,800万円の評価、となるのです。
ついでに土地の評価について、
分かりやすくするために、公示地価で1億円の土地だったと仮定しますと、
路線価が時価の80%なので、
1億円×80%=8,000万円
貸家建付地=路線価評価額 ×(1 - 借地権割合 × 借家権割合)
で計算されるため、借地割合が80%だった場合、
8,000万円×(1ー60%×30%)=6,560万円
❇︎借家権割合は全国一律30%と決まってます
借地権割合とは、その土地の評価額のうち、人に貸している借地としての権利の占める割合のこと です。
国税庁のページで調べる事ができます。

上図の場合、「1㎡あたり、59千円で借地割合40%」と読みます。
1㎡あたりが59,000円なので、1坪で約194,000円という事です。
宗像市や福津市では、路線価のない道路が多いですが、その場合は、その地域の評価倍率から計算します。
路線価・評価倍率評ぺ
計算式は、
固定資産税評価額×評価倍率
固定資産税評価額は、毎年、固定資産税を支払う際に基準となる評価額です。
市役所などから毎年「課税明細書」が送られてきますが、そこに記載されています。
見方がわからない場合は、お問い合わせいただくか、インターネットなどでお調べすると良いでしょう。
❇︎「評価額」ではなく、「価格」とだけ記載されてる自治体もありますので、ご注意ください。
以上により、上記の例では、
建物の評価額+土地の評価額=9,360万円
となり、評価で約50%の節税効果が得られました。
かといってアパートの価値が下がったわけではなく、家賃収入はその時の時価に応じて得る事ができます。
ただし! 空室が埋まればの話しですので、ご注意ください!
よくある「家賃保証!」とは
このようなに、アパートなどの賃貸物件を建てることは、直接的に節税効果があるのですが、よくそれを売り文句に業者などから営業をかけられる事があるかと思います。
確かに相続時は節税でき、その後は家賃収入もあるので一見メリットばかりに見えますが、
①維持費がかかる
②入居者トラブル
③空室問題
この3大憂鬱病があります。
特に③。
基本的には、利回りを計算する際は、満室を想定してますので、3〜4%だとすれすれ、5%以上は最低でも欲しいところです。
そこでよく聞くのが「家賃保証」という文言です。
これは、「空室になっても、その分家賃は保証しますよ」というものですが、厄介なのは、「全額を」とは書いていないのがほとんどなのです。
それでよく相談があるのですが、ほとんどの場合で、次回の契約の更新をしないか、即売却するか、しかないでしょう。
この、「全額は保証しませんが一部は保証します」という部分、契約書に必ず書いてありますので(小さく)、是非お気をつけください。
ついでなので他の注意点として、空室が続いた際の原因で、外壁塗装や内装のリフォームなどを言われる事があるかと思いますが、それも「指定業者を使わななければならない」となってる場合がよくあります。
これも危険です。
塗装というのは、塗装材の割合はどうとでも誤魔化せるので、これにより原価を安く事ができます。
そういう外壁は、持ちが悪く、またすぐ色褪せたり剥がれてきます。
そうこうしてる間に、担当者が変わったりして、責任の持って行きどころを失ったりする場合があるのです。
安かろう悪かろうどころか、高かろう悪かろうの場合もありますので、こういう部分も併せてご注意ください。
最後に
ざっくりと、計算方法や納税のタイミング、一部節税について説明いたしました。
相続税はなかなか普段は意識をしないことでもありますし、意識をしたくない部分でもあります。
そして記事「ダイエットの決心はなぜ揺らぐのか」でも説明いたしましたが、人は先のことを軽視する傾向がありますので、つい先延ばしにしがちです。
少しずつでも良いので、知識だけでも増やしておくようにしましょう。