2020-04-19
ダイエット失敗の原因とは
アメリカに行ったことがある方は誰しも感じたことがあるかと思いますが、あちらの方はあまり食べ物を気にしないですね。
ハンバーガーにポテトがどさっ、手元にはこれまたどデカいグラスにビールがなみなみと注がれてます。
さすがにカロリーは気にならないのか、聞いてみたくもなりますが、あまり気にしないようですね。
それに比べて日本人は、誰しも「ダイエット」か、あるいは、食べ物のカロリー計算や量の調整などを行った経験は、少なからずおありかと思います
その時、こんな経験はないでしょうか。
「ダイエットの為に、食後のケーキをやめようと決心したのに、次の日、食後にケーキを見てしまい、食べてしまった」
そしてだいたいこの時、「これが最後!」と心の中で呟くのではないでしょうか。
最後であったことが、あまり無いにも関わらず。
今日はその心理状態について、解説したいと思います。
人間の心は弱いもので、意思決定する心の持ちようも、実は軟弱なものなのです。
それが分かった上で、毎日の生活における価値判断をするような癖がつけば、自ずと後から後悔するような判断や決断も少なくなってくると思います。
それでは見ていきましょう。
心を動かす現在バイアスと双曲割引とは
上のケーキの例でいうと、
少なくともダイエットを決心した時点では、
痩せた自分 > ケーキ
だったわけです。ケーキより、将来の痩せた自分の方が価値が勝っていたので、ダイエットが決心できたのです。
しかし、次の日になってケーキを目の前にすると、
ケーキ > 痩せた自分
になってしまいました。
これは、次の日になりケーキを目の前にすると心変わりが起きて、ケーキの方が価値が高くなったということです。
このように、各時間における価値の低下の割合のことを時間割引率と言います。
これは、別の言い方をすれば、
人は今もらえる価値を重視し、将来もらえる価値を低く見積もる
傾向があり、それを現在バイアスと言います。
そしてその、現在バイアスをグラフにした線を双曲割引と言います
時間割引率とは
その他の例
似た例で、
①今日ケーキを一つもらう
②明日ケーキを二つもらう
この実験でも、①が多かったようです。目の前にケーキが出されると、明日の二つのケーキよりも価値を感じる方が多いようですね。なんとなくわかる気がします。
他には、
①今日1万円もらえる
②1年後、1万2千円もらえる
たいていの人は、①を選びます。
経済合理性だけを考えれば、②の方が得の割合は高いのですが、今の1万円を選んでしますのです。
他にも、子供の頃の夏休みの宿題で、
①毎日30分だけ勉強する
②最終日にまとめて20時間勉強する
②を選んだ方、少なからずいらっしゃったのではないでしょうか。
これも、今の遊ぶ時間を優先したいが為に、宿題を後回しにしてしまうのです。実際は、最終日になっても他にやることもあったり、睡眠時間のこともあったりで、相当慌てることになってしまうのですが。
他にも、貯金に失敗する例や、スマホ依存によるネットサーフィンなども良い例の一つです。(参考記事 「スマホを触る時間」)
また、それを利用したマーケティングの手法として、
「お支払い後、すぐに使用いただけます!」的な文言は、典型な的な例です。
傾向の強さに個人差が
この「現在バイアス」に基づく時間割引率も、もちろん人により個人差があります。
その率が高い人は、一般的に、せっかちと言われます。
逆に、低い人はその反対なので、我慢強い人と言えそうです。
下頭をご覧ください。
双曲割引のグラフ
「せっかちな人」は、今の価値が、時間と共に下がる割合が早いのに対し、「我慢強い人」は、価値が落ちてく割合が遅いのが分かります。
つまり、「せっかちな人」ほど、今を大事にする、言い方を変えれば、
すぐもらえる1万円、宿題より遊びを優先する傾向にあり、ダイエットの例だと、
将来の痩せた自分より今のケーキ
という価値判断をしてしまうわけです。
つまり、決心が揺らぎやすい方は、「せっかち」な傾向にある、とも言えるのです。
もちろん、人の性格は多面体なので、一概には言えませんが。
ちなみに、「我慢強い方」は、例えば先ほどの例でいうと、
①今日ケーキを一つもらう
②明日ケーキを二つもらう
この①と②に、心理的な価値(効用)の差をあまり感じない傾向があります。
上のグラフの2本の双曲線の「我慢強い人」の線は、あまりカーブしておらず、直線に近いことが分かります。このような割引を、「指数型割引」と言います。
指数型と双曲型を比べてみると、時間割引率による心理的な価値の変化が、
せっかち傾向=双曲型
我慢傾向=指数型
であることが、はっきりお分かりいただけるかと思います。
先延ばしにする心理作用
双曲割引
現在の価値を起点として将来における価値は、
目の前のケーキ > 将来の痩せた自分
であることはこれまで説明してきた通りであり、それが時間割引率によるものであることも説明いたしました。
そしてその傾向が強い人は、
時間割引率が高い=せっかち傾向
であることも説明いたしました。
それを、今度は過去、現在、未来という時間軸に分けてグラフにすると、上図のようになります。
これを解説いたしますと、
過去の時点では、「将来痩せた自分」の心理的価値が上回っていましたが、現在の時点で「現在バイアス」により逆転。「目の前のケーキ」が上回ってしまいました。しかし、現在から未来を眺めると、やはり「痩せた自分」の心理的価値が高いのは言うまでもありません。
しかしながら、また次の日、ケーキを目の前に出されると、上の図の「現在」が右に動くのではなく、また上の図と同じ状態になるのです。
右に動いてくれれば、そのうち
将来の痩せた自分 > 目の前のケーキ
となるので、ケーキを止めることができますが、タチの悪いことに、このグラフは、何度でも繰り返します。
「夏休みの宿題」の例だと、そのまま最終日を迎える、と言うわけです。
これが先延ばしにする心理的な作用です。
原因としては、人間の脳が、未だ爬虫類や哺乳類の本能に影響を受けていることが挙げられます。
つまり、将来、生きてるかどうか分からないので今を優先するのです。
こういうDNAレベルで刷り込まれたような記憶が、目の前のケーキについ手が行ってしまう理由の一つにもなっているのですから、驚きですね。
未来が現実に優先する為には
現在が未来に優先してしまう、そしてその価値判断はDNAレベル、ということでしたが、それでは未来が現実に優先する為には、どのような行動、考え方が必要になるのでしょうか。
まずは、①現在の欲求そのものを視覚に入らないようにすることが重要です。また、視覚だけでなく、味覚や臭覚的にも存在を消すこと。
とは言え、テレビや他の媒体から情報が入ってくることもあるので、完全に消すことは難しそうです。
そこで、消せなかった場合の対応をあらかじめ考えておくのも良いでしょう。
例えば、急激に小腹が空いたときなどは血糖値が下がってるので、チョコレートを一つ、できるだけ時間をかけて食べる、などです。
血糖値が上がり、満腹中枢が刺激されるので、空腹感はだいぶ和らぎます。
また、炭酸水で誤魔化すのも一つの手でしょう。
次に、②未来に得る価値を思い出すこと。
ダイエットであれば、服がカッコよく(かわいく)着こなせてる自分とか、夏休みの宿題の例だと、最終日、ゆとりを持って慌てる必要がなくなること、試験勉強であったら、合格して得るもの、などです。
それを強く思い描くと、目先の現実の欲求を抑えることができるでしょう。
そして最後に、そもそも脳の働きがそうさせてること、を理解することです。
脳の働きが原因であるので逆に、③脳の働きによって変えることもできるということが理解できるはずです。
それが分かれば、①と②の効用も改めて理解できるので、あとは①→②→③の順で思考を巡らせればいいだけです。
最後に
ダイエットの決心が揺らぐ理由について、説明して参りましたが、いかがでしたでしょうか。
心理的に「現実バイアス」が大きく関係し、その根本的な原因として本能的な面が大きく作用してること、がお分かり頂けたかと思います。
そして対策としては、
①まず見ないこと
②将来を描くこと
③心理現象であることを理解すること
ことが大事です。
そしてこの対策は、全ての目先の欲求対策に応用できます。
部屋の片付けにおいても、
「今日の分は明日まとめてやろう」
こう考えてしまいがちなですが、
「明日、2日分散らかってる部屋」「明日、片付いてる部屋」
を思い浮かべつつ、目先の欲求から目を逸らすこと、そしてそれが単なる人間の動物的な煩悩であることを一瞬思い出せば、「今日片付ける」かもしれませんね(*´꒳`*)