2020-03-25

さて、いよいよ施行まであと一週間となりました、改正民法。なるだけポイントを整理しながら詰めて書いていこうと思ってますが、本日は「不動産売買」だけに特化して、関連する内容をまとめます。

この記事ではざっくりとした説明になりますが、詳しくはリンクを貼ってますので、そちらをご覧ください。(まだ間に合ってない条文に関しては少々お待ちください)

売主の瑕疵担保責任に関する見直し

現行法で使われている「瑕疵」という用語自体が使われなくなり、「契約の内容に適合しないもの」「契約不適合責任」などの用語で統一。さらに、その責任追及の選択肢が増えました。

瑕疵…一般的には備わっているにもかかわらず本来あるべき機能・ 品質・性能・状態が備わっていないこと

瑕疵担保責任…売買の対象物に隠れた又は外部から容易に見えない瑕疵や欠陥がある場合、売主が買主に対してその責任を負うこと

                     【瑕疵担保責任 ⇨ 契約不適合責任】

現行法 ⇨ ①追完請求 ②損害賠償請求 ③契約の解除

改正民法⇨ ①追完請求 ②損害賠償請求 ③契約の解除 ④代金減額請求

 また、責任を追及する方法も、現行法では「知ってから1年以内に請求すること」が必要でしたが、改正法では「知ってから1年以内にその旨を売主に通知」で足りることとなりました。

詳しくはこちらのページ「民法の改正で不動産を売る時の注意点」をご覧ください。

危険負担に関する見直し

こちらも聞き慣れない言葉ですが、不動産売買時には気をつけておかなけれならない内容です。

これは、例えば中古住宅の売買で、契約後、引き渡しまでの間に予期せぬ災害や放火などで(売主買主両方に責任が無い=帰責事由が無い)滅失や損傷した場合、どちらがその危険(=リスク)を負担するか、という問題です。

売主からすれば、契約したんだからそのまま買主に代金を払ってもらいたい

買主からすれば、目的物が無いのだから、契約解除したい

滅失損傷の程度にもよりますが、現行法では不動産売買の場合、半損以下と以上で分けて契約書上で規定されてました。

そこで特定物売買における危険負担の規定として新しく、

<現行法> 債権者の反対給付債務は当然に消滅

<改正民法>  債権者の反対給付債務は当然には消滅しない。ただし,債権者は履行を拒むことができる

となりました。

もっとも、不特定売買(同じものが用意できるもの)については、危険負担の概念ではなく「損害賠償」や「債務不履行」といった形で別途履行の請求ができるため、この部分は特に変更はございません。

詳しくは「民法改正 〜危険負担〜」をご覧ください。

原始的不能の場合の損害賠償請求

原始的不能とは、債権が成立する前、あるいは債権が確定する以前に、債務履行が不可能となっている状態のことです。不動産の例だと「契約する前に焼失した」ような場合です。

現行法では、契約前から建物自体が無いので、契約そのものが無効であり、債務不履行に基づく損害賠償請求もできない、とされてきました。

それが、改正法では、債務者の責めに帰すべき事由による場合は損害賠償請求できる、となりました。

例えば、契約前に売主の不注意で火事を起こして、家が全焼した場合です。

これは帰責事由が重要で、売主の不注意によって起こした場合のみです。売主に責任が無い場合は免責されます。

責任が無い場合、例えば契約前に放火された、ような時は、危険負担の問題となり、買主は履行を拒むことができる、つまり代金の支払いを拒むことができます。

<契約前に建物が全焼した>

売主に責任あり⇨損害賠償請求できる

売主に責任なし⇨契約解除できる

意思表示に関する見直し

意思能力制度とは、意思能力を有しない者がした法律行為は無効となることを言います。

意思能力とは自分のしている行為の法的な意味を理解する能力のことです。

例えば、4歳くらいの子供や認知症を患っている方など、自分のしている行為の法的な意味を理解することができないため、意思能力を有しません。

現行法ではこの意思能力に関する規定がありません。

しかし、判例上で「意思能力のない者が行った法律行為は無効である」とされ、それが広く認められ活用されてきました。

改正民法ではそれがきっちりと規定され、

「法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかった時は、その法律行為は無効とする」

と明記されました。

また、旧法では錯誤は無効でしたが、錯誤の要件が明確化され、動機の錯誤の要件についても明示されることとなり、錯誤は取り消すことができると改められました。

詳しくは「改正民法による錯誤の取り扱いについて」をご参照ください。

解除に関する見直し

旧法では、債務者に帰責事由がない場合には、契約を解除できないと定められてますが、両当事者に帰責事由がない場合でも、契約解除が可能と改められました。

この辺りはより柔軟になったということで、解除した方が両当事者にとってメリットがある場合、が一般的でしょう。

最後に

いかがでしたでしょうか。

現行法上でも、判例や宅建業法などで調整していた部分を、民法の改正で綺麗にまとめたという感じですが、

・契約不適合責任

・動機の錯誤

について特に注意が必要です。

契約不適合責任については、双方に責任がなくても追完請求、代金減額請求、契約の解除ができる点、動機の錯誤については、買主の購入目的(動機の部分)がある時は、場合によっては後から取り消すことができてしまう点、です。

別の記事でも書いてますが、今回の民法改正ではどちらかというと買主に有利な印象ですが、見方によればより安全な取引ができるようになった、とも取れます。

そのあたりを理解した上で不動産の売買にのぞむようにすると、より安全かと思います。

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