2020-02-05

今年の4月から民法が大幅に改正されます。

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平成29年5月26日,民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)が成立しました(同年6月2日公布)。
   民法のうち債権関係の規定(契約等)は,明治29年(1896年)に民法が制定された後,約120年間ほとんど改正がされていませんでした。今回の改正は,民法のうち債権関係の規定について,取引社会を支える最も基本的な法的基礎である契約に関する規定を中心に,社会・経済の変化への対応を図るための見直しを行うとともに,民法を国民一般に分かりやすいものとする観点から実務で通用している基本的なルールを適切に明文化することとしたものです。
   今回の改正は,一部の規定を除き,平成32年(2020年)4月1日から施行されます。(出典:法務省HP)

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不動産売買をする際にも、これまで若干、変更された点がありますので、ご紹介していきます。

【瑕疵担保責任】が【契約不適合責任】に

いきなり難しい言葉がでてきましたが、、不動産売買をする際には頻繁に使われる言葉です。

まず瑕疵担保責任とは、

売買契約の目的物が通常有すべき品質・性能を欠いていることです。

例えば買った家の壁を剥がしたらシロアリがいたとか、天井裏に雨漏りがあったとか、そのようなものですね。他にも、心理的瑕疵として以前自殺があったとか環境瑕疵として思いもかけない近所の騒音や異臭、法律瑕疵として建築基準法違反などです。

このような場合、売った側の売主は損害賠償責任を負うか、欠陥(瑕疵)自体がとても重いもので、契約の目的を達することが困難な状況であれば契約の解除。

また、その瑕疵の発見については「〇〇年まで」という制約はなく、いわば無制限。これでは売主も売ったはいいが、永遠に生きた心地がしませんね。(実際は民法が適用されるため、発生から10年、知った時から1年です)さらに、売主の故意や過失に関係なく責任を負わなければならない無過失責任となっております。

ただ、これだとあまりに売主にとって責任が重いので、実務上は

・売主が負う瑕疵担保期間を「引渡後3ヶ月」

・もしくは売主の瑕疵担保責任を全部免責

とする場合がほとんであります。

ただ、そうすると今度は買主にとって不利な状況にもなるのです。買主も不動産購入などは一生にそう何度もあることではなないですし、引き渡し後は荷物の整理やら役所やらで「隠れた瑕疵」の発見ができないことも間々あります。

そこで今回、民法の改正によりこの部分が変わったわけであります。

「契約不適合責任」とは!?

「瑕疵担保責任」であることの問題点とは一体なんだったのか、ということになりますが、まとめて言えば「売主に一見重い責任が課せられてるようで、実は買主にとっても気の抜けないもの」とでも言えるでしょう。つまり、責任の所在がはっきりしないものであったわけです。

そこで今回の民法改正で「契約不適合責任」という概念が創設されました。

これは「種類、品質または数量に関して契約の内容に適合しないものであるとき、買主は売主に対し、損害賠償、補修、契約解除に加え、代替物(追完)、代金減額の請求ができる」というものです。

買主保護の観点からこのように変更されます。

例えば、台所の排水に水漏れがあった場合を考えてみます。もしそれを買主が事前に知っていた場合、「瑕疵担保責任」では、それが隠れた瑕疵に該当するのかを立証するのがとても困難でした。

隠れた瑕疵…買主が取引上において一般的に要求される程度の通常の注意を払っても知り得ない瑕疵

瑕疵…取引通念からみて通常であれば同種の物が有するべき品質・性能を欠いており欠陥が存在すること

「通常の注意」「知り得ない」この辺りの特定が難しかったわけです。

 それが改正後の「契約不適合責任」だと、要は「契約内容に適合しているか」のみの判定となるわけです。

つまり、「水漏れのある台所を有する物件」であることを承知で契約を行えばそれは契約適合であるわけです。

ポイントは契約の内容に適合してるかしていないか、のみです。

買主側からすれば単純になりましたが、これがなかなか大変なものでして、売り手側の視点に立てば、

通常の雨では雨漏りは無いが、風速15メートル以上の北寄りの風雨の場合、北側屋根の破風裏に若干の雨漏りがある場合、それをどうやっていつ証明し検証するのでしょうか。

キリがありませんよね。

契約書上の「条文」では!?

民法では上記のように改正されましたが、「不動産売買契約書」上では、

第13条(契約不適合による補修請求等)

2項 売主が、買主に対し負う前項の契約不適合責任の内容は、修補に限るものとし、買主は、売主に対し、前項の契約不適合について、修補の請求以外に、本契約の無効の主張、本契約の解除、売買代金の減額請求及び損害賠償の請求をすることができません。ただし、前項の土地の契約不適合により本契約を締結した目的が達せられない時は、買主は、売主に対し、本契約を解除することができます。

んんん??どっちだ???

となりそうですが、根っこでは民法が採用されますが、契約自由の原則により、不動産売買契約においては以上のような条文で契約を行うことになりそうです。(民法改正対応版事業用賃貸借契約書式・売買契約書式より)

「契約不適合」があった場合は、売主に修補の請求ができる、ということです。

それがあるからといって契約の解除まではできませんよ、ということです。(売主に帰責事由が無い限り)

ちなみに、「売主が業者」の場合は、改正宅建業法40条を順守する形で「2年以内に通知すれば」、修補請求、代金減額請求、損害賠償請求、解除、違約金などで買主は救済されます。

売主買主の視点

この「契約不適合責任」、実は「任意規定」なのです。

任意規定とは、「瑕疵担保責任」と同様、「瑕疵担保責任は追わない」や「期間を3ヶ月とする」旨の契約も有効となるのです。

だったら変わらないじゃないか、という買主側のご意見も聞こえてきそうですが、そこがまた少し変わっております。

「契約不適合責任」では、信頼利益に加え、履行利益の部分についても損害賠償請求ができるようになったのです。

瑕疵担保責任⇨信頼利益

契約不適合責任⇨信頼利益、履行利益

信頼利益とは、有効でない契約が有効に成立したと誤信することで生じた損害(契約を結ぶために目的地までかかった交通費など)、履行利益は契約が完全に履行された場合に債権者が受ける利益です。

つまり、この点においては、買主側からすれば請求できる範囲が広がった、売主側はその反対で、請求される範囲が広がったというわけです。

双方が納得のいく取引を!

そもそも「物を買う」という行為自体に、瑕疵や欠缺があるというのは、ある程度仕方がないことではあります。

特に中古であれば尚更ですが、新品を買う場合でもそれは同様です。ただし、新品の場合はある種保険のようなものがくっついてる場合がほとんどです。

例えば、新車を購入する際、「3年以内であれば部品の交換可能」のようなものがありますが、それは最初からその点を考慮した金額が付いている、と考えた方が合理的です。

「不具合が出た部分を新品と交換して得をした」わけではありません。

新築住宅も同様で、10年以内であれば雨漏りや基本構造部分に限り、保証が付いております。(2000年4月施行「住宅の品質確保の促進等に関する法律」)

中古住宅の場合、不具合といってもキリがなく、どのラインから不具合というのか、個人によりまちまちですし、実務上、現状勇姿売買が優先されているのが、現状です。

そのような現実の中、この法改正、つまり、買主は請求できる範囲が広がり、売主は請求される範囲が広がる中、どのように対処すべきであるか、双方納得のいく着地をどのように折り合いつけるか、でありますが、以下にまとめます。

・「物件状況確認書(告知書)」および「付帯設備表」を漏れなく、しっかりと記入しておくこと

・上記書類を契約時、買主に書面と口頭で持って説明しておくこと

・インスペクション+瑕疵担保保険(必要に応じて)

まずはご相談を!

売る場合も買う場合も、不動産の場合はこういった特別法による縛りが色々とあり、これは過去にトラブルがあった為に仕方のないことではあるのですが、年々ややこしくなってきている印象です。

まずは身近にいるお詳しい方や、行きやすい不動産屋さん等々、ご相談されるのが良いかと思います。

時間が経過してしまうと、売れるものも売れなくなってしまったり、買えるものも買えなくなってしまったりするものですからね( ´ ▽ ` )

民法の改正で不動産を売る時の注意点

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