2020-08-20
先日、お客様より物件(土地)を探すご依頼があったので、希望のエリアをぐるぐると車で回っておりました。
インターネットには掲載されていない、「現地看板のみの物件」というのも結構あるので、それらを探していたのですが、”とある空き地”に看板が立てられたので、そこに載ってる不動産会社に電話して、引き合い状況を訪ねたところ、その返事は、
ぼちぼちです
とのことでした。
この「ぼちぼち」というお返事、日本独特の婉曲的な言い回しで、良く言えば「オブラートに包んだソフトな言い回し」、悪く言えば「具体性に欠けた誤魔化し」です。
”相槌の延長”のように使う場面では、会話もスムーズに繋がり余計な角も立たず、話しの流れにも抑揚が付くので大変好都合なのですが、白黒付けなければならないような、特に利害の絡む場面になればなるほど、それで済ますわけにもいきません。
上の例でいうと、その「ぼちぼち」とは、
月にどのくらいのペースで問い合わせがあり、合計何件ぐらいあったのか
現在進行中の商談はあるのか
最低でもこの2つぐらいは答えて頂かないと、こちらとしてもお客様に説明のしようがありません。
この「ぼちぼち」、実は不動産業者が良く使う場面がもう一つあります。
それは、
売主様への取引状況の報告時
です。
不動産業者は、売主様より不動産の売却を依頼されるパターンとして、以下の3つがあります。
専属専任媒介契約
専任媒介契約
一般媒介契約
以前の記事「住まいを売る契約の流れ」←こちらでも書いておりますが、業者は、お客様からの問い合わせ状況などについて、
専属専任媒介→一週間に一度
専任媒介契約→二週間に一度
一般媒介契約→報告義務なし
このような形で、売主様に対し報告しなければならないとされます(宅地建物取引業法 第三十四条の二)
不動産業者は、売主から不動産の売却の依頼をされた場合、業務の処理状況について、報告をしなければならない義務があるのです。
全日本不動産協会より
あくまでも「業務の処理状況」を報告すれば良く、具体的な数字までは報告する義務が無いため、「ぼちぼち」という返事が多くなってしまいます。
問い合わせ客から、ただ場所を尋ねられただけでも「ぼちぼち」。
値引きができるか聞かれただけでも「ぼちぼち」。
3ヶ月間で1度だけ問い合わせがあった場合でも「ぼちぼち」。
そう、「ぼちぼち」は、全てを覆い被せる力を持っているのです。
恐るべし「ぼちぼち」、
「最近体調はどうですか?」
「ぼちぼちデス」
「景気はどうですか?」
「ぼちぼちデス」
「コロナはいかがですか?」
「ぼちぼちデス」
「熱中症は大丈夫ですか?」
「ぼちぼちデス」
ただ、
「オススメの映画はありますか?」
「ぼちぼちデス」
というわけにはいきません。
こちら側が、具体的な答えを欲している場合は、「ぼちぼち」は回答にならないのです。
むしろ、このような場合に使う「ぼちぼち」は、否定表現と捉える方が良いでしょう。
つまり、どこかの業者に売却を依頼してて、問い合わせ状況を尋ねた際、
「ぼちぼちデス」
と言われた場合は、問い合わせが無かったか、或いは、やる気が無いかのいずれかと見た方が良いでしょう。
一見サラリとかわしたように感じる「ぼちぼち」。
ところが、使う場面によっては、その中身がハッキリ見えます。
相槌程度で済む場面では「流れと抑揚」
回答を求める場面では「逃げ」
たかが「ぼちぼち」ですが、されど「ぼちぼち」。
不動産業者とのやり取りで、この言葉が出てきたらだいたい要注意です!
そういう時は、具体的(できれば数値)な内容で答えてもらうよう、要求しましょう。