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2020年02月29日
不動産知識

行動経済学でみる不動産売買

不動産売買に携わる者として、お客様の不動産をお預かりしそれを売る、または誰かの不動産を買うお手伝いをするという職業柄、行動経済学というものはとても参考になります。たくさんの事例がある中、不動産取引でも参考になりそうものをピックアップしてご紹介していきたいと思います。

 

宝くじを買う心理とは!?

まず、人はなぜ「宝くじ」を買ってしまうのでしょうか。

1等の当選確率は1000万分の1と言われます。もう、想像もつかないほどの確率の低さですね。

これを還元率(いくら掛けていくら戻ってきたかの率)でいうと、

1位 オンラインカジノ 97%

2位 パチンコスロット 85%

3位 競馬 76%

4位 宝くじ45%

1万円分買っても、平均の当選金額は4500円ということですから、買えば買うほどマイナスです。他の賭博の方がよっぽど確率は高いのですが、宝くじを買う人は、なぜか途絶えません。これは、人は効用関数に応じた期待効用を最大化する行動をとるためと言われてます。プロスペクト理論の「確率加重関数」です。

人間の意思決定は確率をそのまま掛けた期待値によるのではなく、確率自体にあなたの思いを加重した(つまり確率加重関数によって変換した)主観的なデシジョン・ウェイトで各選択肢の価値を重み付けして行っている <出典http://fis.nri.co.jp/ja-JP/publication/kinyu_itf/backnumber/2013/05/201305_10.html>

簡単に説明しますと、「100万円得する」という事象も、

①貯金が0円

②貯金が10億円

この2つの場合で、その「得した感」は全く異なり、その感覚を実際の確率に加重してしまうんですね。

宝くじの例で言うと、一等が当たる確率はほぼゼロに近くても「万が一(実際は1000万分の一)でも当たれば一発大逆転」という思いの強さを、実際の確率に加重して、行動を起こす、つまり宝くじを買うわけです。

保険の場合は、さらに「確実性効果」というものが加わります。これは、ゼロリスクを重視するという価値判断です。

●死ぬ、入院する、壊れる→賭けない

●保険に入る(保険料を払う)→賭ける

確率の低い方に賭けて様子を見るのではなく、確実に「支払う」=「損をするリスクはゼロになる」という行動を取ります。反対に、死亡や事故の確率がほぼゼロに近いことは分かっていても、実際の確率より高く見積もってしまうのだそうです。

そのような人間の不思議な行動は、普段目にしたり、記憶に残っていたりしている事象は、実際より高い確率で起こるものであると考えてしまうのだそうです。これを利用可能性ヒューリスティックと言います。

確かに、悲惨な交通事故や火災のニュースの記憶、宝くじで当選し世界中を旅行したり高い買い物をするシーン(宝くじのCMはそういう要素が入ってますよね)などは、誰しも頭に色濃くインプットされてると思います。

そのようなものは、起こる確率はほぼゼロに近いのに、なぜか起きそうだと感じてしまうんですね。逆に、それを利用したのが、保険なのですけど。

最近の新型ウイルスも

人は経済合理性だけで行動しているわけではなく、そこに感情や複雑な思いが入るというわけです。宝くじも、「買わなきゃ当たらない」のも事実ですし、保険も「安心を買う」という意味では、合理的な面も否定できません。「お金の額」だけ見れば損をしていても、それを損していると感じない価値判断が、人間にはあるんですね。

なかなか複雑です。

例えば最近の新型コロナについて、実際の感染者数はまだまだ少ないのですが、「死亡」や「増えている」というニュースは恐怖を感じ、実際の確率にその「思い」が加重され、高い確率となってはじき出されます。つまり、薬局からマスクが消えるということです。(実際、マスクの効果もはっきりしていないのですが)

恐怖という感情は特に人間に強いインパクトを与えるようで、それを「リスク評価」と言います。

 

中古住宅売買時における行動心理

上記をまとめると、

●実際の確率に思いを加重して高く見積もってしまう

⇨確率加重関数

●ゼロリスクを重視する

⇨確実性効果

●正確な情報が得られない時は限られた情報で高い確率を見積もってしまう

⇨利用可能性ヒューリスティック

●恐怖の確率は高く見積もってしまう

⇨リスク評価

このような行動パターンが、人間にはあるんですね。

これを、不動産売買で例えるならば、真っ先に思い浮かぶのは「瑕疵担保責任」でしょう。中古住宅を買う場合の「瑕疵担保保険」などが、具体例として挙がると思います。中古住宅売買の場合、売主様の知り得る「物件の状況、情報」を可能な限り聞き取り、あとは任意で業者等を入れ、シロアリ、床の傾き、雨漏りなどを検査し買主様に引き渡しますのですが、そこでこれまでに「見た・聞いた・読んだ」情報が頭をよぎります。

風呂場下にシロアリがいた

天井裏の奥に雨漏りがあった

購入後数年で、徐々に床が傾いてきた

もちろん契約時の業者による調査では分かりえなかったもので、このような事例をニュースや記事などで見たり聞いたりすると、その記憶が印象に残り購入を躊躇するか、保険に入るかの選択となるのです。「瑕疵担保保険」は、加入する条件等があったり、売主様のご意向も伺わなければならなかったりするので、スムーズにいかないことも多々あります。

ただ、そこで忘れてはいけないのは、

そもそも中古なので”新築の半値”や”それ以下”になってることが多い

のです。完璧なわけが無いのです。

まとめ

日本では、新築の住宅に税制などの補助を手厚くしてきた背景があり、新築住宅が高度経済成長期以来、ずっと増え続けてきました。反面、中古住宅の市場が疎かになってしまい、その評価額も木造で25年などと言われてます(25年でゼロ評価)。ただし、実際は木造でも手入れが良ければ40年でも50年でも全く丈夫な建物はたくさんありますし、全てが評価がゼロということはあり得ません。

上記のような行動経済学上の価値判断に加え、日本がこれまでに取ってきた政策の影響などもあり、中古住宅の市場がなかなか活性化しないという現状もあります。

この記事を、皆さまに取って合理的な、そして未来性の高い各自のご判断のお役に立てていただければ何よりです。

それでは

 

この記事を書いた人
薙野 秀貴 ナギノ ヒデキ
薙野 秀貴
お釈迦様の有名なエピソードですが、ある日弟子が「良き友を得ることが聖なる道の半ばだと思えるのですが?」と訪ねたのに対し、お釈迦様は「道半ばではない、聖なる道の全てだ」と答えたそうです。ここで言う「良き友」とは、人生上で起こる様々な苦しみや悩みから解放してくれ、同時に学びや喜びを共感してくれ幸せを気づかせてくれる存在です。それは時に上司だったり部下だったり、先生だったり師匠だったり、旦那さんや奥さんであったりするかもしれません。それをお釈迦様は人生で最も尊重しうる「友」としたのですね。 インターネットやSNSの浸透で、より早く、より膨大な量の情報、そして人へのアクセスが可能になりました。 その中から種々選択する毎日に追われ、現代は、情報化社会から選択社会になったかのように感じてしまいます。 令和が始まったそんな時代、我々も不動産という仕事を通じて、皆様にとっての「良き友」に少しでも近づくことができるよう、努力して参りたいと思っております。
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