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2020年05月17日
政治・経済・社会・心理学その他

エンゲル係数を知って食卓を守る

「エンゲル係数」という言葉、よく聞くと思いますが、

「全消費に占める食費の割合」

と思い浮かべる方がほとんどかと思います。

ただ、食費というのはどこまで入るのか、また、単純にこの数値が低いと豊か高いと生活に逼迫している、と言えるわけではありません。

明治頃から統計を取られている、長い歴史のあるこちらの指標について、本日は解説してみたいと思います。

エンゲル係数とエンゲルの法則

この指標の歴史は古く、約150年以上前、ザクセン王国とプロイセン王国(どちらも今のドイツ)の統計局長していた統計学者のエルンスト・エンゲル(1821-1896年)により発表されました。

大きくは「エンゲル係数」と「エンゲルの法則」の2種類があります。

エンゲル係数とは

消費支出全体に占める食料支出(食料費)の割合(%)

エンゲルの法則とは、その中身のことで、

所得が高く(低く)なるにつれ、エンゲル係数は低く(高く)なる

これらのことが示されてます。

時代が変わっても、食費というものは昔から必ずかかるものであるため、それらが消費支出の中でどのくらいの割合を占めるかの統計を計ることにより、その時代ごとの生活の状況や水準などを伺い知る指標の一つとして、日本においては総務省統計局において、家計調査の結果と共に算出、集計されてきたものです。

計算式

このエンゲル係数、地域間によっても差があり、意外なことに、北海道、東北、東海、四国、九州は、関東、関西よりも低いのです。

先ほどのエンゲルの法則では、「所得が高いほど低い」となってましたが、近年の社会情勢や経済状況・ライフスタイルの変化で、全てに当てはまるわけではないのですね。

さて、このエンゲル係数、計算式はこちら

エンゲル係数(%)= 食費 ÷ 消費総支出 × 100

この食費、当たり前ですが、「他人にあげるもの」は入りません。「自分が口にするものだけ」の費用です。

戦後の高度経済成長期においては、生活様式が国民の間でそれほど変わらなかった為、所得が上がるにつれてテレビや冷蔵庫などの耐久消費財の消費が多くなり、エンゲル係数も下がっていくという逆相関の関係がある程度くっきりと見られましたが、

近年、生活スタイルが地域ごとや年齢層ごとに大きく異なる傾向が高まった為、一概に、エンゲル係数が低い(高い)=所得水準が高い(低い)とはならなくなってきてる

のが現状なのです。

野菜は自前で栽培してるご家庭などを考えれば分かりやすいかと思います。また、田舎の方では他人から譲ってもらったり、安く大量に購入することもできたりするので、エンゲル係数がその分下落します。

反対に、東京などの都会では、支出のうち食費に回す部分がどうしても大きくなる為、「所得も高いが食費も高い」状態となるのです。

また、「消費総支出」の範囲をどこまで入れるかについても、時代と共に変化してるので、感覚的には金融ビッグバンの前と後で、だいぶ変わってきてるのではないか、と感じます。

金融ビッグバン:国内の金融市場(株や債券など)を公正かつ自由で国際的なものにするための一連の改革のこと。日本では1996〜2001年頃にかけて行われきた。

 

ライフスタイルの変化とエンゲル係数

1998年の金融システム改革方などにより、金融取引の自由化が大幅に進んだことに併せ、この頃から消費税が5%に上げられます。ちょうど、橋本政権の頃です。

それらにより構造改革や規制緩和が進められ、名目GDPの成長が停滞。

男性の平均給与はその頃からほぼ停滞、というかむしろ下がってるほど。その分女性の平均給与は少し上がってます。

その他、食費にあまりお金をかけない傾向が顕著になりだしたのもこの頃です。

100円コーヒーやコンビニ食が増え、レトルト品も多く出回るようになり、2005年ごろまでエンゲル係数は22〜23%前後でほぼ横ばい。

ところが2006年以降現在まで、上昇傾向に転じます。

特に2015年と2016年はピョンと跳ね上がってますね。

エンゲル係数の上昇要因を考える

なだらかな上昇の原因としては、燃料代の高騰と健康志向が高まったことなどが挙げられます。

2015年と2016年の急な上昇に関して、総務省統計局によるところでは、

消費者物価(インフレ率)が名目値で上がり実質値で下がった為、相対的に食費の占める割合が上がった

と説明してます。

ただ、実感としては、ですが、2006年ごろからの緩やかな上昇と近年の急激な上昇の主な原因は、

賃金(所得)の下落

ではないでしょうか。

官僚や役所はよく小難しい理由を並べるのですが(よくあるのは燃料費の高騰災害による云々)、だいたいこういう時はもっと単純なところに答えがあるものです。

下のグラフをご覧ください。

実質賃金とエンゲル係数の関係性

どう見ても、

2005年頃からの実質賃金の下落

と被ってるような気がするのですが。。

ここ20年近いエンゲル係数の上昇傾向の原因は、年ごとには色々要因があるにせよ、大まかには、

総所得が、名目値でも実質値でも下がったこと

はほぼ間違いないようですので、ものの見事にエンゲルの法則は当てはまってることになります。

よく、食品価格が上がったからと説明されてるサイトを見かけますが、見方を変えれば、我々の所得のが食品価格の上昇に追いついてない、とも言えるのではないでしょうか。

GDPとエンゲル係数の関係性

もちろん、所得が増えたからといって、すぐさまエンゲル係数が下がるものではありません。

先ほども説明した通り、所得に占める「消費の割合」が分母なので、所得を株式投資に使ったり、貯金したりすると、所得は上がってもエンゲル係数も上がってしまいます

ただ、長い年月に渡るGDPの伸び悩みは、明らかに起因してると思われます。

エンゲルの法則では、

所得が低くなるにつれ、エンゲル係数は高くなる

ので、

90年代頃から比較して日本は貧困化している

ということになります。

一人当たりGDPも昨年、世界26位に転落しました。韓国とほぼ同水準です。

エンゲル係数と経済の関係性

戦後の復興から高度経済成長まで日本人の所得は上がり続け、一億総中流と言われるようになり、人々はモノやサービスを買い続けました。

食費以外の支出増え続け、それに伴い、エンゲル係数も下降し続けます。

ところがそこで、アメリカ様のお怒りを買い、円安ドル高の是正、いわゆるプラザ合意がなされます。

為替は円高ドル安に向かい、日本では円高不況。

その後、ルーブル合意により慌てて内需拡大に舵を切り円安へ誘導しますが、その円が向かった先が土地(とゴルフ権)。

急激な値上がりにより、借金してまでそれらを買って投資をするという”投機”が繰り返され、バブルは膨らみ続け、やがて弾けます。

90年代はまだ弾けたバブルを緩やかに回復させる手も残ってたのですが、なぜかそこから緊縮路線にひた走ります。

2000年以降はご存知「小泉・竹中による構造改革」。

ここで、「PB目標の黒字化」が掲げられ、経済は奈落の底に落ちる一方で今に至る、というわけです。

このPB目標の黒字化がどれだけエグいことかと申しますと、これにより

「国が支出を増やすためには、他の予算を削るか、増税するしかない」

という状況になったことが挙げられます。

もちろん、財政出動によっても達成に持っていくことは可能なのですが、短期では赤字が膨らんでしまうため、その手が封印されてしまいます。

そしてあの名プロパガンダ「将来の社会保障のために消費増税が必要が言われるようになります。

社会保障費を、人々が消費する度に払わなければならない「消費税(物品税)」で賄ってる国は、世界中を探してもありません。

この、繰り返される消費増税により(その目的は他にもたくさんありますが、それはまた別の機会に説明します)当然ですが消費は低迷。消

費が低迷すれば、その向こうにいる人の所得が減り、また消費が低迷…というデフレのスパイラルを繰り返します。

これが、長らく続くGDP低迷の原因です。

GDP=生産の合計=所得の合計=支出の合計です。

全体の経済規模が減ってる中、食費は相変わらずかかりますので、エンゲル係数は増えて当然

さらに新型コロナによる影響で、仮に100兆円規模で補正を組んだとしても、せいぜい消費増税前2019年9月ごろに戻るだけ、と言われてますので、26%ぐらいで高止まりになると思われます。

1位のイタリアが27%ですので、補正を組んでも世界2位

ここ数年、これは変わってないというのが今の現状なのです。

緊急事態宣言は解除されていく流れになってますが、早急に内需拡大に舵を切り、自国の生産力を高める政策を打っていかないと、これまでのように

外国人さんいらっしゃ〜い

たくさんお金を使ってくださ〜い

土地も買ってくださ〜い

このようなことばかりやってると、自国でモノも食料も作れなくなり、企業も土地も買われ、後進国化していくことになるのです。

最後に

いかがでしたでしょうか。

エンゲル係数を知ることで、日本が置かれた状況がご理解いただけたかと思います。

経済が低迷

エンゲル係数が上がる

一部の富裕層が儲かり、多数は貧困化する(非正規、外国人労働者 e.t.c...)

総所得は変わらないが中流層以下の所得が下がるのでエンゲル係数は上がる

 

今回のコロナ騒動でうやむやになってますが、直近では2019年10月の消費増税。

確か「リーマンショック級」があれば上げなかったはずです。

8%へ戻すどころか、消費税は景気が元に戻るまで当面は撤廃で良いと思います。

どんな給付金より、これが一番早く、一番効果的です。

エンゲル係数が高止まりしているということは、それだけ他の消費に回すゆとりがない(世界で2番目に)ということです。まずはそのことを知り、今後の政府の政策を国民みんなで監視するようにしていきたいですね。

それが食卓を守ることにもなりますので。

この記事を書いた人
薙野 秀貴 ナギノ ヒデキ
薙野 秀貴
お釈迦様の有名なエピソードですが、ある日弟子が「良き友を得ることが聖なる道の半ばだと思えるのですが?」と訪ねたのに対し、お釈迦様は「道半ばではない、聖なる道の全てだ」と答えたそうです。ここで言う「良き友」とは、人生上で起こる様々な苦しみや悩みから解放してくれ、同時に学びや喜びを共感してくれ幸せを気づかせてくれる存在です。それは時に上司だったり部下だったり、先生だったり師匠だったり、旦那さんや奥さんであったりするかもしれません。それをお釈迦様は人生で最も尊重しうる「友」としたのですね。 インターネットやSNSの浸透で、より早く、より膨大な量の情報、そして人へのアクセスが可能になりました。 その中から種々選択する毎日に追われ、現代は、情報化社会から選択社会になったかのように感じてしまいます。 令和が始まったそんな時代、我々も不動産という仕事を通じて、皆様にとっての「良き友」に少しでも近づくことができるよう、努力して参りたいと思っております。
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