このところ、相続に伴う不動産の処分についてのご相談が増えております
相続が発生した場合、見知らぬ不動産業者や各種法律系の事務所からDMが来たり、直接訪問があったりすることがあります。
個人情報保護法などで、個人情報の管理には厳重になってる時代にも関わらず、不思議に感じてらっしゃる方も多いようで、弊社におきましても、よくお客様から聞かれることとして、
相続の手続きをした直後から、なぜ不動産会社からのDMや訪問が来るようになるのか?
または、
そういう業者を信頼していいのか?
という内容のものが多くあります。
本日はその仕組みと内容について解説します。
相続した情報は法務局で取得可能
相続した場合、相続登記を行います。
現在、これが義務化される流れとなっており(相続登記の申請義務化:令和6年4月1日施行)、これにより相続した情報は法務局で誰でも閲覧可能となります。
とは言え、たくさんある情報の中から、何故、相続した不動産のみを抽出できるのか、については疑問が残ります。
これは、各行政機関に対し「行政文書開示請求」というものを行い、不動産登記のうち変更・新設されたものの一覧(不動産登記受付帳)を出してもらうよう請求します。
さらに、そこから時期等を指定して、その期間に相続登記がなされたものだけをリストUPすることができるのです。
取得した相続リストから個別に情報を得る
こちらの相続リストは、印紙代で300円、リストからコピーをすればコピー台だけという、とても安価で相続登記の情報を得ることができてしまいます。
ただし、この時点では「土地の住所(地番)」と「登記更新の理由」しか記載がないので、その情報をもとに個別に登記簿を取得し、現在の所有者(相続人)の名前と住所を調べる、という作業を行うのです。
この不動産登記受付帳から「相続」した情報を抽出して、そこから関連する情報を探り出し、相続人リストを作っている業者が存在するのです。
一般に「名簿屋」などと言われることが多いのですが、このような名簿業者やDM業者が、それらを各地域の不動産業者や司法書士、行政書士、税理士等の事務所に対して販売を行うことで、情報が広まるのです。
この手続き自体は決して違法な「個人情報の流出」には当たらないので、突然、知らない業者が訪ねてきたり、DMが送られてきたりするのです。
相続登記の義務化について
以前も記事にしておりましたが、不動産登記法の改正により、令和6年4月1日から相続登記の申請が義務化されます。
これにより、相続(遺言含む)で不動産を取得した相続人は、相続により所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければならないこととなります。
遺産分割協議で不動産を取得した相続人は、遺産分割協議が成立した日から3年以内に、その内を基にした登記の申請をしなければなりません。
またこの法改正では、正当な理由がないにもかかわらず申請をしなかった場合は、10万円以下の過料が科されることがあります。
訪問やDM業者は信頼できるのか
前述の「相続登記の義務化」は、怠ると過料が科せられるので、必然的に相続不動産を早く処分してしまいたい、と思いがちです。
また相続税の納入資金として売却を急ぐ場合などもあるでしょう。
一概には言えませんが、お金を出して相続不動産リストを名簿屋などから購入するような業者は、普段そのような依頼が無いからお金で取得している、という傾向があると思われます。
そのような業者は、リストの購入費用がかかってる分、それを回収しようとするので、相続人に対し売り急ぐよう促してくることが多いのです。
もちろん最終的に信頼するかしないかは任意ではありますが、この仕組みを知っておくことで、判断材料の一つにはなるのではないでしょうか。
最後に
今回は「相続の手続きをしただけなのに、なぜか不動産業者や各種士業の先生らからDMや訪問が来る仕組み」について、解説いたしました。大まかにはお分かりいただけたかと思います。
前述の通り、法務局で誰でも請求できるものなので、相続に関すること以外の業種の方々も、このような名簿リストを利用しているかと思われます。
かと言って、相続登記は義務となっているので、手続きをしないわけにもいきません。
問題は、知識をつけて情報を収集して、最後はご自分でどう判断するか、です。
そのような業者が一概に全て悪いわけでは無いと思いますが、売り急いでたり、周りから急かされてる時は冷静な判断ができなくなることがあります。
こちらの記事を読んでいただいて、何かしらのご判断の一助になれば幸いです。