2021年4月に行われた民法の大幅な改正に伴い、不動産登記法において、これまでは登記の義務がなかった「所有者不明土地」の登記について、申請の義務化が決まりました。

施行は2024年頃となっておりますが、過料(10万円以下)による罰則もありますので、注意が必要です。

今回はその中身について、簡単に説明いたします。

不動産登記の種類

不動産登記には大きく分けて、①表示の登記と②権利の登記があります。

表示の登記→不動産の物理的状況を示して権利の対象を特定するための登記(義務あり

権利の登記→権利を公示するための登記(義務なし

権利の登記については、そもそも当事者が得た(得ることになる)権利については、その当事者がどうするかについて国が介入すべきではない(私的自治の原則)という根本的な考え方があり、これまでは登記の義務なし、とされていました。

<月刊不動産より>

所有権移転の登記申請義務とは

「登記の義務なし」だと、不動産価値が無さそうな土地についてはそのまま放置されることが多くなってしまい、結果、その面積が九州と同じぐらいになってしまいました。

そのうち本当に所有者が分からない土地は5%程度ではあるのですが、残りの95%は、「探せば所有者は分かるが、当事者が移転登記をする気がない」という土地になります。

所有権が移転されてしまうと、その土地の管理をしなければならなくなったり、当然、固定資産税もかかってくるので、その気持ちも分からなくはありませんよね。

ただ、少子高齢化に伴い今後そのような土地が増えてくると、地域に必要な公共の事業や開発が滞ってしまったり、その土地が必要な人にとっても、取得ができにくくなってしまいます。

そこで、それらについて歯止めをかける為に不動産登記法が改正され、権利部の登記の義務化がなされるようになりました。

相続登記の義務化、罰則規定は!?

今回義務化されるのは、「相続登記」についてです。もちろん遺贈についても、受贈者が相続人であれば同様に所有権移転登記が義務付けられます。

また、「相続させる」といった内容の遺言によって取得した場合も含まれます。

登記を申請する期限については、

自己のために相続が開始したことを知り、かつ、所有権を取得したことを知った日から3年以内

となってます。

共有の場合は、共有者全員によって申請しなければなりません。

相続分に応じて相続登記がなされていた場合、その後に遺産分割があり、当初の相続分を超えて所有権を取得した場合についても、遺産分割の日から3年以内に申請しなければなりません。

これらを怠った場合は、10万円以下の過料が課せられます。

注意が必要なのは、今回の改正以前に所有している、相続登記や変更登記が済んでいない不動産についても対象となってる点です。

通常の法改正で過去に遡ることは滅多に無いのですが、今回は先ほども述べましたように、目的が「現在の所有者不明土地の洗い出し」なので、このような改正になりました。

現在進行形で相続登記が済んでないことに気づかずに、ある日突然過料の請求がくる場合などもあり得ますので、ご注意ください。

相続人であることの申し出を!

とはいっても、普段なかなかやることのない「登記の申請」を、一般の人々に義務付けるのは負担が重いということもあり、今回の改正では、

相続があった場合、相続人である旨の申し出がなされれば、登記申請を行わなくても義務違反にはならない

という仕組みになりました。

所轄の法務局に行き、登記官に自らが相続人であることを申し出れば、所有権の取得に係る所有権移転登記を申請する義務を履行したものとみなされる、ということです。

その後の手続き(申し出をしたものの氏名、住所などを登記簿に付記する作業)は登記官がやってくれますので、まずは法務局に相談に行かれるのが良いと思われます。

ただし、その申し出の後に遺産分割などがあり、新たに所有権を取得した場合は、その遺産分割の日から3年以内に所有権移転登記の申請をしなければなりません。

まとめ  

特定空き家に指定されると固定資産税の減免が受けられなくなったり(出典:「特定空家等に対する措置」に関する適切な実施を図るために必要な指針(ガイドライン) | 国土交通省)、今回の相続登記の義務化などにより、今後、そのままになった不動産を流通させる動きが活発化してきそうです。

とはいえ、価値も乏しく、そもそも相続したくない不動産をどうすれば良いのか、分からない方も多くいらっしゃるのも事実です。

2023年4月27日に施行される「相続土地国庫帰属法」(→土地のみ)により”国に収用してもらう”という方法も一応はあるのですが、その為には一定の基準があり、その基準を満たすことを条件に国に引き取ってもらうこともできるのですが、その基準が結構ハードルが高く、それであれば普通に売却できるのでは!?と思わなくもありませんm(_ _)m

最近、空き家を利用したリノベーションだったり、空き地を利用した資産活用(駐車場や貸地等)であったり、そのままになってる不動産を活用した運用方法も多様化してます。

これを機に、持ってる不動産の見直しを考えてみるのも良いタイミングかもしれませんね。

 

 

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