不動産、特に戸建て住宅の価格について、売る側と買う側には必ずズレがあります。
その原因は、
人間は、自分の所有物を1〜2割ほど高く見積もる心理作用があるから
です。
特に不動産の場合は、自分が実際に住んでいたので、その価値を高く評価しがちです。
しかし買う側は、当然にそれが分からないものですし、人それぞれ価値観そのものが違います。
それも踏まえた上で、中古の住宅を高く売るためにはどのようにすれば良いのでしょうか、考えてみましょう。
まず、価格を決める要素としては、
・土地の価格
・建物の状態
・近隣の状況
の3大要素が大きく関わります。
金融機関などでの価格の評価は、
土地:相続税評価額×土地面積
建物:再調達価格×建物延べ床面積×(残存年数÷耐用年数)
不動産市場ではそこに相場というものが入ってきます。これはその時々の経済状況に応じたミクロの部分で影響され得るもの、です。
これを解説しているとそれだけで数千文字になりそうなので、今日はやめておきます。
さて、土地の価格は「駅や周辺の街並み、環境」などによって変わってくるものなので、ある程度仕方のない部分もありますが、建物については所有者次第で変えられる要素があります。
本日はその部分、建物の価値保存のためにはどのような点に注意が必要か、また、心がけておくことなどを中心に解説したいと思います。
よく「内容が難しい」と言われるので、今日こそはカンタンに!!!!!o(・x・)/
とりあえず見た目重視!
中古の戸建て住宅をお客様にご紹介する際、必ずそのお客様が気になさる第一指標は
外観
つまり、見た目です。これは意外と見落とされるんですね。
なぜかというと、
人は、いつも見てるもの(目にするもの)については、その価値の評価が疎くなってしまう
からです。
潔癖症の方などは別ですが、例えば壁に小さな子供の落書きがあったとして、それを発見した当初は気になっていたのですが、1〜2年経つと、それが壁の模様かのように、気にならなくなってしまいます。でも、初めてその家を訪れた方は、一発でその落書きに目が行きます。
それと同様で、家の外観も、自分が感じる以上に他人は敏感です。
例えば、
軒天の合板が一部剥がれている
よくあるのですが、軒天は雨漏りの症状が一番出やすい場所なので、つい見落としてしまいますが、内覧しているお客様や、特に我々仲介業者はその部分を必ず見ます。
これが剥がれていると、雨漏りを疑わなければないからです。
例え雨漏りはないにしても、見た目が悪くなるので、気をつけておいた方が良いでしょう。
他に、大きな部分として、
外壁の塗装
庭の草刈り
内装(クロスや大きな傷等)
など。
人は第一印象の半分以上が視覚的情報で決まっているとも言われてますので、お金がかかる部分もありますが、普段から気にしておけば劣化を予防できることも多々ありますので是非ご注意ください。
建物を傷めない為にしておくこと
車は車検がありますが、家にはありません。
その車でさえ、中古のものを買うときは、多少「半信半疑」の部分はどなたでもあるかと思いますが、金額の安さという魅力が勝ち、買われるのだと思います。
住宅には車検が無い分、「住宅診断」というものがあります。
今は「ハウスインスペクション」とも呼ばれたりしてますが、これは基本的には売る時になってするものであり、普段住んでる時にする人は、なかなかいないしょう。
なので、普段は自分で気をつけるしかないのですが、屋根裏に上がるも大変ですし危険です。
そこで、基本的には天井のシミと傾きの2点だけでも気を付けておくと良いと思います。
天井のシミは雨漏りですが、雨漏りが原因で湿気が溜まり、そこから柱や梁が痛んでそれが傾きの原因にもなったり、シロアリの原因にもなったりしますので、なかなか侮れません。
チェックポイントとしては、
・天井や壁のシミ、変色
・瓦の割れ
・結露
・サッシの歪み
この辺りを普段からチェックするようにし、あとは家の中に新鮮な風を入れるようにし、湿度がなるだけ溜まらないよう、心がけましょう。
お庭のチェックも欠かさずに
これも車で例えますと、洗車をしてない中古車を買おうという方は、なかなかいらっしゃらないと思います(/ _ ; )
ご自分が家を買う際のことを考えると分かるのですが、物件情報を見る際に、草刈りの終えた家と、草刈りも木々の伐採もしてない家、どちらが魅力的に見えるでしょうか。
なのでまず、庭木の手入れや雑草類は、第一印象にも直結しますので、常に伐採しておきましょう。
買おうという方は、こちらが知らない間に現地に見に来てることもありますので。
また、擁壁についてもチェックが必要です。
ヒビや割れがある場合は、業者に頼んでコンクリートで逐一埋めておくようにすると良いでしょう。金額は大したことありませんが、その割れを放置して倒壊などした場合は、数十万円は最低かかることが多いです。
この擁壁、業者目線だと、必ず傾きをチェックします。
割れはもちろんですが、擁壁の傾きはもっとタチの悪いものなんです。
理由は、今年の4月に改正された債権法(民法)の記事でも書きましたが、買主は売主に対し、買った物件に不適合部分があった場合、代金減額請求、追完請求、損害賠償請求、契約の解除ができるようになったから、です。
(参考記事→民法の改正で不動産を売る時の注意点)
この民法改正、不動産の売買においては、買主に有利な改正と言われており、売主の負担はこれまでより重くなります。
擁壁に傾きがあり、それを業者が見落として、売主は知ってたが伝えなかった場合、これまでの判例のパターンからすると、
宅建業者と売主
が責任を負わなければならなくなるでしょう。ほぼ100%で。
戸建てを売るからといって、周りの擁壁を見落とすと、痛い目に逢うことになります。
(もちろん特殊な機械を使わなければ分からい程度の傾きは、これには該当しませんので、その点はご安心ください)
私がこれまで扱った事例ですと、明らかに斜めに倒れ掛かってた擁壁でしたので、
「当該物件は〇〇側隣地との境界にある高さ〇〇mのコンクリート擁壁に傾きが見られる。将来、当該擁壁の倒壊により人的、物的被害を生じても、売主は責任を負わないこととする。」
と、特約に明記し、買主にも承諾してもらいました。
この契約不適合責任というのは、買主が知って、それを承諾した場合は当然に負いませんが(新築や新しめの中古だとそうはいかないこともあります)、傾いた擁壁があれば、物件の価格は当然その分下がりますので、普段から気をつけておくと良いでしょう。
(参考記事→ブロック塀の危険性)
擁壁も、早めに対策をしていれば、安く済むことが多いですので。
その他、庭周辺では、水道管からの漏れ(地面にあふれ出ていたり)がないかなども、チェックしておくと良いと思います
付属物・付帯設備の評価
よく聞かれることとして、
「エアコンは付けといた方が良いですか?」
と尋ねられることがあります。
その他、テレビやタンス、ソファなどもありますが、ほとんどがサービス品ぐらいで思っていただくとちょうど良いかと思います。
つまり、それがあるからと言って不動産価格に直接反映するものではありません。
むしろ全てが片付いており、ハウスクリーニングも入れて綺麗に掃除されてる方が、好まれる場合が多いです。
最近、リサイクルショップの「2nd Street」でもそういった家具類の流通が多くなってきてるようですが、それはあくまでもお客様がピンポイントに欲しいものを選ぶから、であり、中古住宅に付属してるものをそのまま欲しいと思うかは、また別のお話しになります。
また、タンスなどがあった場合、その裏側を点検することが困難なため、その点では売却に不利な要素になってしまうことがあります。
とはいえ、買い手が付いて、「すぐに移動するにも置く場所もなく、売れるまでの間はどこかで一旦保管したい」というような場合もあるかと思います。
貸し倉庫などに預ける方法もありますが、弊社の場合でしたら、
家財類を一旦預かる保管倉庫
がありますので、そのような時はお申し付けください。
付帯設備として喜ばれるものNo. 1は、駐車場でしょう。
それも、道路から入りやすく設計されており、コンクリート敷きで、屋根(カーポート)などが付いていれば、だいたい買い手から喜ばれます。
ということは、売値にも反映されやすくなるのです。
ただ、高さ1.9m前後の、比較的高い土地に付属してる堀車庫のようなものは、残念ながら、価値が付きません。
それは、買い手の車が入る入らないの問題ではなく、今の時代では単に価値として付加されないということです。
とは言えマイナス要素になるものではないので、ヒビ割れなどに注意しつつ、内覧などの際は綺麗に片付けておくようにすると好印象です。
改築や増築の評価
これもよく聞かれますが、増改築は、今の日本ではそれほど評価されません。
むしろ、固定資産税がその分上がってたりするので、嫌がられることもあります。
そして、そういった部分は、後から付属的に付けられたものが多く、基礎部分の防水、防カビ処理がしっかりされてないせいで、シロアリが発生してる場合があります。
そういった処理もしっかりなされ、家の価値を上げるような増改築であれば喜ばれることもありますが、後から簡易的に付け足したようなものは、ほぼ金額には反映されない、と思って間違いないと思います。
自分好みに改造した車がその分、高くなるかと言えば、必ずしもそうならないのと同じですね。
アメリカなどでは、増改築により広くなったり機能性が高まったような家は価値が上がるのですが…日本ではまだのようですね。
耐震性能や住宅診断は!?
耐震性や住宅診断(ハウスインスペクション)は、現行では、「耐震基準適合証明書」なるもので、それらを評価してます。
フラット35の審査で必要であったり、税制上、優遇される場合があるので
あれば買主が喜ぶが、無くてもそれが買わない理由になることは少ない
ぐらいのものです。
これは、土地の事情もあるかと思いますが、関東の方では、震度1〜2の揺れが頻繁に起こりますが、九州の方では、比較的少ない気がします。(というか滅多にない…)
そのため、地震による災害の意識が低く、それより大雨や台風による被害リスクを高く見る風潮があります。
ハウスインスペクションは、5〜8万円ほどで調査を依頼することができますが(協会加盟の宅建業者からの依頼であれば半額になります)、色々と細かく指摘され、逆に不安を煽られて売却するのが怖くなる、ような場合もあるのが実情です。
先ほども述べましたが、売主は、知れば知るほど、責任の範囲が広がりますので。
その点が矛盾してるようにも感じ得ますが、ローン等の関係で買主側からの要望があれば仕方ない部分もありますので、その際も特約や、事前打ち合わせなどでしっかりと信頼関係を構築しておくことが重要になるかと思われます。
最近、税制の優遇措置の幅が広がってるようなので、その辺りにつきましてはまた別の記事で解説して参りたいと思います。
最後に
いかがでしたでしょうか。
需要と供給が価格を決めるのですが、不特定物の売買の場合は、それぞれ物件の個性というものが異なります。
出来るだけ高く売りたい、と思う向こう側には、出来るだけ安く買いたい、と思う買い手がいるのです。
ではその「安く」をどう捉えるか。
土地は相場があるので仕方ありませんが、建物については、
保存状態が良く、価値ある設備が付帯したものであれば、年数の経過による価値の下落をなるだけ抑えることはできる
のです。
逆に、保存状態が悪ければ、建物の価値はゼロ評価にもなり得ます。
高く買いたいという買い手は、おそらくいらっしゃらないでしょう。
でも、買い手が建物を見て「高い」と思ったものが、「思ったより安ければ」いいのです。
家は生き物のようなものです。手入れが良ければ長生きできます。
今日からでも是非ご自分の家の点検を習慣にしてみてください=(^.^)=