2020-05-06
この4月より120年ぶりに改正されたました債権法につきまして、今回は「第三者弁済」、特に「債務者の意思に反する弁済」について例をあげながら説明したいと思います。
これは、例えばお金を返さなければならない立場の人が、自分で返済する意思を持つにもかかわらず、他の第三者が代わりに借金返済をするような場合の弁済例です。
それが有効か無効か、旧民法と改正民法との違いなどについて、なるだけ図を使いながら解説していきます。
不動産取引の場においても、家賃の返済や請求などの場面で少々関わってくる内容ですので、ご興味のある方は是非ご覧ください。
第三者弁済は基本OK!
債務者=一定の給付をなすべき義務を負う者
債権者=一定の給付を請求することができる権限を持つ者
債務者が債権者に対して債務の弁済をした場合は、その債権は消滅します。
この弁済は第三者でもすることができます。
これが基本ですのでまずは頭に入れておいてください。
旧民法の規定では
ただこの場合、もし債務者が「やめてくれ!」という意思だった場合、どうでしょうか?
第三者からしてみれば、代わりに弁済してあげたのに、ありがた迷惑という話になってしまいます。
債権者からしてみれば、返済してもらったので「それで良し」となります。
この三者の関係について、これまでの民法では、「第三者」が「利害関係を有する第三者」でなければ、債務者の意思に反して弁済することができないという規定になっておりました。
旧民法<第474条>
・債務の弁済は、第三者もすることができる。ただし、その債務の性質がこれを許さないとき、又は当事者が反対の意思を表示したときは、この限りでない。
・利害関係を有しない第三者は、債務者の意思に反して弁済をすることができない。
他方で、「第三者」が「正当な利益を有する者」であれば、債務者に対して求償権を取得すると共に、債権者に代位することができる、とされています。
旧民法<500条>
・弁済をするにつ いて正当な利益を有する者は、弁済によって当然に債権者に代位する。
「債権者に代位する」とは「債権者に取って代わる」というぐらいの意味合いで良いでしょう。「求償権」は、「債務者の債務を代わりに支払った人が、その肩代わりをした分をその人(債務者)に請求する権利のこと」です。
ここでいうところの「利害関係」や「利益」とは、法律上のものです。
「親だから」や「友人だから」ではありません。
例でいうと、
<474条>の利害関係を有する第三者とは、
・物上保証人
・担保不動産の第三取得者
・後順位抵当権者
など。保証人や連帯保証人は債務者に入るため、この第三者には含まれません。
<500条>の利益を有する者とは、
・物上保証人
・担保不動産の第三取得者
・後順位抵当権者
・保証人
・連帯保証人
・連帯債務者
こちらには、保証人なども含まれます。
改正民法では
旧民法下では、ご覧のように<474条>の利害関係を有する第三者と<500条>の利益を有する者の違いが、少々曖昧です。
そこで、改正民法では債務者の意思に反しても弁済ができる第三者の要件を
「弁済について正当な利益を有する者」…①
として、第三者弁済(法定弁済)ができる要件を明確にしました。
さらに、債権者保護の観点から、債務者の意思に反する弁済であることを債権者が知らない場合には、正当な利益を有しない第三者による弁済でも有効とする規定が、新たに追加されました。…②
これにより、第三者による弁済の範囲が大幅に広がったことになります。
弁済について正当な利益を有する者→ ①
弁済について正当な利益を有しない者→ ②
最後に
第三者弁済に関する改正点、特に「債務者の意思に反する弁済」について、解説いたしました。
債務者からすれば弱い立場ではあるので、いくら「拒否の意思」があったとしても、他の要因(債権者がそれを知ってたか否か)で弁済の可否が決まる、というわけですね。
金銭の債権債務関係だとそこまで難しくないのですが、例えば、
ある歌手Aが宗像フェスに出演する
債権者:主催者
債務者:歌手A
という場合、債権者(主催者)側からするとその歌手”A”でなければいけない(履行したことにならない)わけで、第三者じゃダメなわけです。
このように、必ずしも第三者による弁済を、債務者がOKするとも限らない状況が、現実には起こり得ます。
本日はここまで。
次回は逆に、債権者の意思に反する弁済について解説します。