2022-02-21

土地を買ったら道路が含まれていた事例


  • うきは市の借家
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以前、「うきは市の借家」をご紹介しました。

うきは市吉井町(借家4戸)

うきは市吉井町(借家4戸)

1200万円

この上の図をご覧になり、少し(?)となる方もいらっしゃるかと思います。

ちょうど「隅切り」のような形で道路に接する◯印の部分。

ここは、道路なのか敷地なのか、という問題です。

道路であれば、道路法が適用されます。

敷地であれば、この部分だけ所有権移転(払い下げ)はできるのか。

日本の道路は狭いところに昔から便宜的にあったものや、その後、行政が貰い受けて管理を行なっているものなど、様々あります。

そこで本日ご紹介する事例は、

土地を買ったら、一部が道路に含まれていた場合の取り扱い

について、解説も含め説明いたします。

まずは、下図を。

【ご相談】の内容

私(乙)は甲さんからAの土地を買い、所有権移転登記も済ませました。

また、A’の部分もAの一部として私の名義になりました。

売買代金は、A’も含むA全体の面積に、坪単価を掛けて支払ってますから、もちろん私としては、A’分の代金も甲さんに支払っているわけです。

ところがA’は、国道の一部になっています。

売主の甲さんはどうやら昔、国にA’の部分を売り渡しているらしいのです。

どうしたらいいのでしょうか?

所有権の主張について

まず、前提として、登記簿上の名義が「乙」さんになっていれば、Aの土地全部(A’含む)の所有権はもちろん「乙」さんです。

これは民法177条に従った解釈となります。

<民法177条>
不動産に関する物件の得喪(とくそう)及び変更は、不動産登記法その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない

これを本相談に当てはめると、

国はA’の部分を道路として譲り受けたが、不動産登記法によって所有権移転登記をしていなければ、登記なしでは、甲から二重に譲り受け登記を自己名義にした者に対し、A’の所有権を主張できない

ということになります。

二重譲渡の時は…

「所有権を主張できる」ので、乙は家を建てる際、A’の部分も使うことができるのか(所有権を主張して)、もしくはそれができないなら国から地代をもらえるのか、というお話になるかと思います。

道路法では

ところが、道路法4条では、こんな場合であっても国は一銭も払うことなく、これまで通り、引き続き道路として使用できるものとしています。

<道路法4条>
道路を構成する敷地、支壁その他の物件については、私権を行使することができない。ただし、所有権を移転し、または抵当権を設定し、もしくは移転することを妨げない。

要は、移転しても良いが、私権の行使(自分の土地として使用、収益すること)はできないよ、ということです。

つまり、取り戻し請求も地代請求もできないのです。

一応、所有権の移転も抵当権の設定もできるのですが、「使えない」ということです。

もちろん、道路が廃止された場合は、自分の土地として使用・収益できるようになります。

ただ、この条文が適用される前提として、「国が適法な手続きにより道路としたこと」が必要です。

道路にするための「適法な手続き」とは

前述の「適法な手続き」とは、

①路線の指定(認定)があり、

②道路管理者が道路の区域を決定し、

③その敷地等に所有権、地上権、賃借権(権原)を取得し、

④必要な工事を行なって道路としての形体を整え、

⑤道路として使用する

というものです。

確かに「所有権を主張きる」という点では、乙さんに分がありますが、実際に現況は道路として使われており、①から⑤までの手続きを踏んでいるので、上記「道路法4条」の制限を受けることになるのです。

これは、最初の「うきは市の借家」の敷地の「逆パターン」ですが、市保管の「道路台帳」と実際の航空写真とも見比べてみましょう。

Google Mapの航空写真

市役所の道路台帳

随分、現況と違ってますが、あくまでも「現況が優先」されますので、道路はアスファルトの部分、三角形の敷地は「国(公)の所有」ということになります。

もちろん、その三角形の部分を使用・収益することはできません。

余分に払った土地代の返還は?

上記の例で、A’の部分は、使うこともできなければ、貸すことも切り売りすることもできません。

なので売主「甲さん」から、その分の土地代を返してもらうことは、可能です。

ただし、A’の部分が国道(道路)であることを知って、若しくは、説明を受けて買った場合は、返してもらえないかもしれません。

その場合、どこまで説明を受けたか、それに必要な書類等の交付を受けているかなど、立証が難しくなりそうです。

最後に

土地の売買をする際は、対象地の地番の範囲と面積を確認し、金額と照らし合わせ、不必要な土地が算入されていないか、確認する必要があります。

これは、売主にとっても買主にとっても、後のトラブルを避けるために必須と言えます。

アスファルトが敷いてある部分が道路だろう

アスファルトが敷いてない部分が対象地だろう

と安易に考えていると、実際は「他人の土地や道路で、使うことができなかった」、ということも十分あり得ます。

不動産取引でつい見落としがちな「敷地と道路の関係」についての解説、以上にしたいと思います。

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